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妊娠中の歯科治療について
2022年9月9日
ご妊娠中の方へ
▼ 妊娠中は、お口のトラブルが起こりやすくなります。
妊娠中は女性ホルモンの影響で、お食事の変化や唾液の分泌量の変化のため、お口の中の変化を感じる方がいらしゃいます。女性ホルモンは歯周病菌の繁殖を促進し、虫歯菌を洗浄する作用がある唾液が減ることで、虫歯リスクが高まり、様々なトラブルが起こりやすくなります。<br>さらに、つわりの時期には嘔吐反射により歯磨きがしづらくなり、お口の中が不潔な状態になりがちです。基本的な治療であれば、妊娠中でも受けて頂くことができますので、安心して出産を迎えるためにも、生まれて来る赤ちゃんのお口の健康のためにも、妊娠中のお口のトラブルは早めに解決されることをおすすめします。
▼ お母様のデンタルケアが大切なわけ
お母様のお口から赤ちゃんに虫歯の原因菌であるミュータンス菌がうつることがあります。そのため、お母様のお口の中を清潔な状態にして、赤ちゃんへの感染を防ぐことが大切になります。しかし、出産後は育児などが忙しくてなかなか歯科医院に通院できないことも多いため、妊娠中に適切な検査・治療を受けられて、出産前にミュータンス菌を減少させるように努めましょう。
また、女性ホルモンの影響で起こる歯肉炎や歯周炎を「妊娠性歯周病」と言い、早産・低体重児出産のリスクを高めることがわかっています。お口が健康な妊婦と比べて、妊娠性歯周病にかかっている妊婦の早産・低体重児出産のリスクは約7倍と言われており、喫煙やアルコールなどと比べても非常にリスクが高いとされています。妊娠性歯周病は適切な治療により改善させることが可能ですので、妊娠がわかり早い段階で、一度お口の中の健康状態をチェックされることをおすすめします。
妊娠中に親知らずが痛んだり、炎症があった場合、妊婦さんの状態によっては抜歯が難しい場合があります。問題を引き起こす可能性がある親知らずは、妊娠前に抜歯しておくことをおすすめします。また、抜歯時に麻酔や投薬の必要もあるため、安心・安全に出産を迎えるためにも、妊活中など、妊娠の予定がある方は一度親知らずの状態を確認されることをおすすめします。
▼ 治療について
妊娠時期別の治療方針としては、以下のようになります。
◎妊娠1~4ヶ月(妊娠初期)
麻酔などを使用しない基本的な治療であれば受けて頂くことができます。この段階からお口の健康チェックを受けられて、安心・安全に出産を迎えるようにしましょう。
◎妊娠5~8ヶ月
安定期と呼ばれ、最も歯科診療を受けるのに適した時期です。ほとんどの症例で通常の治療が可能ですので、痛みなどの症状の有無に関わらず、歯石除去やクリーニングも含めて、受診され治療を受けるようにしましょう。
◎妊娠9ヶ月以降(妊娠後期)
いつ陣痛が起きてもおかしくない時期なので、この前までにお口のケアを済ませておくようにしましょう。
◎妊娠中のレントゲン検査・麻酔の使用について
基本的に、妊娠中にレントゲン検査を受けても、胎内の赤ちゃんへの被爆の影響はほとんどないとされています。歯科用エックス線撮影装置による被爆量は、歯を部分的に撮影するデンタルフィルムでは0.01mSVで、お口全体を撮影するパノラマフィルムでは0.02mSVです。また、生殖器への影響としては、デンタルフィルムでは0.00003mSV、パノラマフィルムでは0.0008mSVとなります。日本人が日常生活において自然に浴びている自然被爆量の平均が2.1mSVですので、歯科のレントゲン撮影の影響は、問題ない値といえるのではないでしょうか。レントゲン撮影は、歯科治療の際に的確な診断を行うために必要なものです。治療を受ける際に、歯科医師に相談してみてください。
また、歯科治療で使用される局所麻酔は患部周辺にしか停滞しないため、赤ちゃんへの影響はないとされ、使用する局所麻酔薬の70%が代謝・排出されるので、授乳婦であっても麻酔薬の母乳移行への心配はまずないとされています。当院では、妊娠初期では応急処置にとどめ、痛みなどの症状がある場合には、安定期まで待ってから治療を行うようにしています。
▼ 安心して、出産をむかえるために
妊娠中は、妊婦さんのお体の状態がどのように変化するか予測することは難しく、妊娠後期につわりがひどくなる場合などもあるため、治療計画が立てにくいと言えます。そのため安心して出産を迎えるためには、妊娠前や妊娠がわかった時点で、お口の中を健康な状態に保つための準備を始めることが大切です。<br>生まれて来る赤ちゃんの虫歯リスクを高めないためにも、また、妊娠性歯周炎による早産・低体重児出産のリスクを高めないためにも、お早目にお口のケアを受けて「出産の準備」を整えておくようにしましょう。
参考文献
- マタニティー歯科外来~命を育む女性の口腔保健のために~ わかば出版
- プレママと赤ちゃんの歯と口の健康 Q&A 医学情報社
- 臨床医のための小児歯科 Basic & Casebook デンタルダイヤモンド社
- 品川区親子健康手帳 令和4年度版
舌小帯短縮症について
2022年7月6日
舌小帯短縮症について
舌小帯とは、舌の裏側に付いているヒダ(ひも状になっている場合もあります)のことを言います。このヒダが生まれつき短かったり、ヒダが舌の先端に付いていることがあり、このような状態を舌小帯短縮症と言います。舌を前に突き出すと、舌の先端にくびれが出来、ハート型の舌になります。
ほとんどのものは重要な問題が無いのですが、ひどくなると、舌先になればなるほど、舌小帯が短ければ短いほど、哺乳力が弱く、体重増加が悪くなります。また3~5歳になって発音がはっきりしないことがあります。
舌小帯の短縮の程度は、舌の先をどの程度上げられるかによって、軽度・中等度・重度の分けられます。簡単な判定方法をご紹介します。「お口を大きく開け、舌の先を上顎に付けて下さい」と言います。お口の大きさ(縦の長さ)の1/2以上上げられたら、「軽度」です。1/2以下しか上がらない場合は、「中等度」です。舌を上に上げようとしても下顎の歯よりも上がらないか、全く上げられない場合は、「重度」と判定します。



症状について
程度がひどい場合は、以下のような症状が出ます。
- “浅飲み”:赤ちゃんの乳房への吸い付きが浅い。
- “眠り飲み”:吸い付きが弱いため、哺乳不十分のまま疲れて眠ってしまう。
- “体重が増えない”:哺乳量が不十分の可能性があります。
- “乳首が痛い”:舌で吸えないため歯茎で乳首を噛まれるためです。
- “舌先がハート型になる”:舌先が歯茎に固定されているためです。
- “舌足らず”:舌先を使う“ら行”、“さ行、”た行“などの発音が不明瞭です。
- “親も子どもの時に舌小帯を切った”:遺伝性があります。
- “アイスクリーム・コーンが舐められない”:舌を長く出せないばかりか、舌先を持ち上げることができないためです。
治療について
舌小帯短縮症に対する治療には、手術と機能訓練があります。舌小帯短縮の程度が軽度の場合は、舌を上手に動かすトレーニング(機能訓練)を行うだけで症状が軽減される場合もあります。
トレーニングだけでは舌の動きを改善するのが難しいと判断された場合には、舌小帯のヒダを切る手術(舌小帯伸展術)を行います。術後は、瘢痕収縮の防止や、動きやすくなった舌を上手に使いこなせるようにするために、機能訓練を行います。
治療に関するQ&A
Q 手術は何歳くらいから出来るの?
哺乳障害がある場合などでは、新生児から行うこともあります。舌小帯短縮の程度や機能障害の程度により、手術の時期を決定します。
Q手術をするのに入院は必要なの?
A 通常は外来で処置を行いますが、局所麻酔での処置が難しい場合には、入院になることもあります。
Q手術の時には全身麻酔をするの?
A 通常は、舌に局所麻酔をするのみです。ただし、低年齢のため、局所麻酔時に動いてしまう場合には、全身麻酔による手術を検討することもあります。また、新生児では、麻酔をせずに舌小帯を切る手術飲みを行う(糸で縫う処置を行わない)場合もあります。患者さんの状態に応じて適切な方法を決定します。
Q手術や術後は、痛みがあるの?
A 局所麻酔時に多少、痛みますが術中の痛みはありません。麻酔が切れると痛みが出ることもありますが、手術の次の日には痛みが引くことがほとんどです。痛み止めを処方いたしますので、ご安心ください。
Q手術した日は、ご飯を食べることが出来るの?
A 痛みの状態にもよりますが麻酔が切れれば、食事をしていただくことは可能です。柔らかめのものを召し上がって頂くと良いかと思います。
Q手術は自費ですか?保険はききますか?
A 手術に関しては保険が適応されます。手術前後の舌の機能訓練は自費となります。
Q手術の後も通院が必要なの?
A 手術の翌日の消毒と約7日後の抜糸のために来院して頂きます。この他に術後の機能訓練が必要な場合は、通院をして頂く必要があります。
Q手術をするだけで発音が上手になるの?
A 手術を行うことで、運動範囲は広くなりますが、発音障害は必ずしも改善するわけではありません。これは、これまで舌小帯短縮があり、舌が動きにくい状態にあったために、舌の筋力が弱かったり正しい発音をするのに必要な舌の動きを経験してこなかったことによるものです。このような場合には、手術後に舌の機能訓練を行う必要があります。
Q舌の機能訓練はどのくらい行うの?
A 手術後の抜糸をした後くらいから、舌を動かす訓練を行います。舌運動の状態や、発音障害の程度にもよりますが、大体1ヶ月に1~2回、術後3ヶ月くらいトレーニングをします。
当院での舌小帯治療について
症状が重度でない場合は、経過観察で様子をみていることがほとんどです。
発音障害や舌の動きに問題がある場合は、舌のトレーニングを行うこともあります。
切除が必要な際は、当院で切除するケースと専門の大学病院にご紹介するケースがあります。
舌小帯でお悩みの方は、一度、当院にご相談くださいませ。
「八重歯」に犬歯がなりやすい理由とは!?矯正や抜歯の前にメリット・デメリットを確認しよう!
2021年4月20日
「八重歯」と聞くと、犬歯のことだとあなたはイメージしたのではないでしょうか。
歯列から飛び出して歯が重なり合っている状態を正しくは指す言葉ですが、動物のキバのようでチャーミングだと八重歯の犬歯を肯定的に見ているかもしれません。
ただ虫歯や歯周病などにつながるリスクも八重歯は指摘されています。
原因や治療法・影響など八重歯についての情報を今回はまとめてみましょう。
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「フィステル」は潰すな!子供の乳歯にもできて自然治癒や市販薬では治らない
2021年3月16日
口のなかにニキビができている!?
「フィステル」を見て、そう思われた親御さんも多いのではないでしょうか。
しかしニキビは毛穴にできるものであり、毛穴のない歯茎にはできません。
ではフィステルとは何なのでしょうか。
原因や治療法をまとめて紹介します。
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「すきっ歯」の輪ゴム自力矯正は危険!原因や5つの治し方を学ぼう
2021年2月16日
お子さんの上の前歯2本を見てみてください。
あいだが開いていないでしょうか?
「すきっ歯」と呼ばれる状態ですが、裏にほかのトラブルが隠れている可能性があります。
原因や治療法をまとめましたので、一緒に学んでいきましょう。
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「舌苔」は細菌のかたまり!取り方や口内への影響を学ぼう
2021年1月19日
口を開けて舌を出してみてください。
舌の上に白い苔(こけ)のようなものが溜まってはいないでしょうか。
それは「舌苔(ぜったい)」と呼ばれる、細菌のかたまりです。
自覚症状もなく自然に溜まっていく舌苔は、それ自体には問題なくとも、二次的なトラブルを引き起こす原因になりかねません。
舌苔がどういうものなのか、またどうやってケアすればいいのかをまとめて紹介します。
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「歯茎」のチェックポイント4選!歯だけでなく子供の歯茎の病気も予防しよう!
2020年12月15日
仕上げ磨きなどをとおしてお子さんの口のなかを観察している親御さんも多いでしょう。
お子さんが違和感を抱いていれば、病気などの発見も容易かもしれません。
しかし中には痛みや自覚がない場合もあるのです。
今回は歯茎にしぼってチェックしたいポイント4つを挙げました。
参考にしながら、お子さんの口のなかを観察してみましょう。
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赤ちゃんの歯の生える順番が違う!?正しい順番や歯並びへの影響を知ろう
2020年11月17日
赤ちゃんの歯の生え方が本の記述などと違うと心配になる親御さんも多いでしょう。
順番が違ったとしても多少であれば問題ありません。
しかし、あまりにも不規則に生えてくる場合は、将来の歯並びに悪影響が及ぶ危険があるため小児科医などに相談するのが望ましいです。
歯が生える順番が違うのはどういったケースで、どのような処置を行うべきなのか。
まとめて紹介します。
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「ホワイトニング」を子供はできない!?歯科医院でのクリーニングとフッ素塗布がおすすめ
2020年10月20日
白い歯は魅力的です。
薬剤を自宅で塗ってホワイトニングをする大人は多く、お子さんにも同様のサービスを受けさせたいとあなたは思っているところかもしれません。
しかし子供向けにホワイトニングのサービスをしている小児歯科医院などが近くにないのではないでしょうか。
なぜ子供向けにホワイトニングを行う歯科医院が少ないのか、また行なっている歯科医院ではどういった施術が行われているのか。
子供のホワイトニングについて情報をまとめてみます。
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歯並びや舌小帯短縮症など!!遺伝するかもしれない口周りのトラブル
2020年9月22日
あなたは虫歯や歯並びで小さい頃に困った経験はありますか?
口周りのトラブルの中には遺伝の可能性が指摘されているものがあり、あなたに症状があればお子さんにも遺伝する場合があります。
どんな症状や病気に注意した方がいいのかをまとめて紹介します。
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