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「フィステル」は潰すな!子供の乳歯にもできて自然治癒や市販薬では治らない
2021年3月16日
口のなかにニキビができている!?
「フィステル」を見て、そう思われた親御さんも多いのではないでしょうか。
しかしニキビは毛穴にできるものであり、毛穴のない歯茎にはできません。
ではフィステルとは何なのでしょうか。
原因や治療法をまとめて紹介します。
フィステルとは歯茎にできる白いできもので痛みはない

フィステルとは、歯茎にできるできものの一種です。
「瘻孔(ろうこう)」や「サイナストラクト」と呼ばれる場合もあります。
フィステルができたとしても痛みがないため気づかない・気にしない人も多くいますが、自然治癒が難しい・治療が必要な症状といえます。
フィステルのある歯茎では、歯の根っこ部分(歯根)の先端で炎症が起きてできた膿みが袋(歯根嚢胞)を作って溜まっています。
歯根の先端に起きる炎症は、根尖性歯周炎や根尖性歯周組織炎と呼ばれます。
膿みが溜まるにつれて歯根嚢胞の内圧は上昇します。
すると内圧を下げるために、歯茎の表面まで管を伸ばして膿みを放出しようとするのです。
歯茎の表面まで管がたどり着くと、ニキビのようにプクッと腫れあがります。
これがフィステルです。
膿みの色が透けて白く見えます。
膿みを放出するために小さな穴が開いており、指などで押すと実際に膿みが出てくる場合もあります。
歯の神経が死んだり歯根のキズついたりするのがフィステルの原因

ではフィステルができるのはどのような原因が考えられるのでしょうか。
3つに大別してまとめてみました。
■歯の神経が死んでいる
歯の神経が死ぬと細菌が繁殖してフィステルにつながる恐れがあります。
神経まで達するような虫歯ができたときや、転倒したりなにかに衝突したりして外傷が加わったときには注意が必要です。
■治療済みの歯からの再感染
過去に歯根の治療を行った歯から炎症が広がりフィステルができる場合があります。
治療が施されたとしても、精度が低かったり不十分であったりして細菌を取り残していれば増殖してフィステルや炎症につながる危険性があるのです。
■歯根破折
事故だけでなく、歯ぎしりや食いしばりによって歯に大きな力がかかると歯根が折れることがあります(歯根破折)。
とくに神経のない歯はもろく、噛んでいるうちに割れるケースもあるほどです。
破折した箇所から細菌が入りこんでフィステルや炎症へとつながっていきます。
フィステルができたときの治療法や処置

フィステルができたら歯科医に相談してください。
放置していても治りません。
たとえ消えたとしても、原因を取り除かなければまたできる可能性があります。
むしろ炎症が悪化すると、周りにある顎の骨が炎症から逃げるように溶けるなど他の箇所に悪影響が及ぶかもしれません。
フィステルを治すためには細菌を徹底的に除去する必要があります。
どのような治療や処置が行われるのかをまとめてみていきましょう。
■根管治療・感染根管治療
針のような器具を使い、感染した神経や細菌を除去して根管内を清掃・消毒する治療です。
歯茎から出ている歯の上の部分(歯冠部)からアプローチして処置をします。
根管治療で歯根の炎症がおさまれば、フィステルは消えるでしょう。
■歯根端切除術
歯茎に埋まった歯根の部分からアプローチして細菌除去をする治療です。
嚢胞が大きすぎて歯根の治療だけでは治らないなど、根管治療では処置が難しい場合の選択肢として挙げられます。
歯茎を切開して、歯根の先端と嚢胞を切り取って摘出する処置が施されます。
■抜歯
歯根破折などで歯根が割れていたり、穴が歯に開いていたりする場合は抜歯するかもしれません(穴は塞いだり矯正したりして感染を抑える場合も)。
なかには歯根端切除術ができないときに、「歯牙再植術」といって、一度抜歯して歯根の先端と嚢胞を切り取って摘出してから再び元の位置に歯を戻すケースもあります。
フィステルに関するQ&Aまとめ

原因や治療法をまとめましたが、フィステルに関して押さえておきたい情報はほかにもあります。
代表的なものをQ&A形式でまとめました。
チェックしてみてください。
■フィステルは潰すと自然治癒するものでしょうか?
いいえ、上でまとめたように自然治癒するものではありません。
むしろ潰してしまうと細菌が入り込む危険性があります。
歯磨きを丁寧にしたとしても根治にはつながりません。
歯科医院で治療してください。
■同じ歯茎のできものである「口内炎」との違いは?
同じ歯茎にできて色も白くて似ていますが、口内炎とフィステルは違うものです。
フィステルはできても痛みがないのが多いと説明しましたが、口内炎はできると痛みを伴います。
またフィステルを押すと膿みが出る可能性がありますが、口内炎は膿が溜まっている状態ではないため押しても膿は出てきません。
■同じく歯茎から膿が出る病気である「歯周病」との見分け方は?
膿みが出る場所に違いがあります。
歯周病は、歯と歯茎の隙間の「歯周ポケット」に膿みが溜まり出てきます。
対するフィステルは、歯根の先端が膿んで付近の歯茎が膨らむのでした。
■フィステルは市販薬で治せますか?
歯茎の腫れを抑えるような市販薬を飲んだり塗ったりしてもフィステルは治せません。
嚢胞には血管が通っておらず薬の成分が届かないため、歯根嚢胞やフィステルは抗生物質ですら治せないのです。
■子供の乳歯でもフィステルはできますか?
できる可能性はあります。
むしろ乳歯にできるフィステルの方が、永久歯にできたものよりも大きくなる特徴が指摘されています。
まもなく永久歯が生えてくる時期では、歯根の吸収が進んで根管治療がうまくいかないケースがあり、乳歯を抜歯する場合もあります。
フィステルを見つけたら歯科医に相談

フィステルの原因や治療法をまとめましたが、痛みがなかったとしても歯科医院で治療するのを忘れないでください。
とくにお子さんの口のなかを見たらフィステルがあったという人もあるでしょう。
フィステルや歯根嚢胞などは治療しなければ治らない病気です。
お子さんの口の健康をしっかり守っていきましょう。
またフィステルのほかにも歯茎のトラブルについて別記事で情報をまとめています。
そちらもぜひ参考にしてみてください。
■「歯茎」のチェックポイント4選!歯だけでなく子供の歯茎の病気も予防しよう!
https://www.nagomi-kids-dental.com/blog/2020/12/15/4-checkpoints-for-childrens-gums/
■「萌出嚢胞」とは!? 子どもの歯茎に黒紫の水ぶくれができたら!?
https://www.nagomi-kids-dental.com/blog/2020/04/21/about-eruption-cyst/